α(アルファ)リポ酸点滴

Intravenous drip on the background of patient under the heart monitoring

α(アルファ)リポ酸とは

αリポ酸とは別名、チオクト酸と呼ばれる脂肪酸の一種です。
人間の身体を構成する60兆個の細胞全てに存在し、それを活性化させる働きを持っています。
元来わたしたちの肝臓でつくられているものです。

細胞レベルでのエネルギーの生産の過程で、補酵素としてミトコンドリアに必要な栄養素が入れるようにし、細胞内での代謝を助ける役割をします。
αリポ酸には体内のミトコンドリアを活性化する作用もあります。
また、わたしたちが食事から摂るブドウ糖のエネルギーの変換効率を上げる働きと、活性酸素の抑制による強力な抗酸化作用も持っています。

αリポ酸がないとブドウ糖やアミノ酸などのエネルギーのもとになるものがミトコンドリア内に入ることができず、エネルギーが産生できません。αリポ酸は生きていくためには必要ですが、40歳を超えると激減し、60歳になるまでに非常に少なくなってしまいます。

化学式はC8H14O2S2、分子量は206.33 g/molです。

分子量が小さいために効率的に吸収され、細胞膜を通過し、血液・脳関門も通過でき、脳内でエネルギーを盛んに利用できるようになります。

多数の酵素の補助因子として欠かせない光学活性のある有機化合物で、この分子はカルボキシル基と環状のジスルフィドを含んでいます。生物学上で重要なのはR体の方といわれています。

一般的な作用とは

αリポ酸は、ビタミンCやビタミンEの400倍の抗酸化力があり、コエンザイムQ10・ビタミンC・ビタミンE・グルタチオンなど他の抗酸化成分を再生させて再利用する効果があります。
がん・C型肝炎・肝硬変治療にも効果があるとされています。

遺伝子レベルで、細胞へのダメージを予防する働きや、酸化ストレス(フリーラジカル)を消去して、病気にならないようにしてくれています。

αリポ酸は水溶性・脂溶性どちらのビタミンにも働くことができるため、
糖類の代謝に関係するビタミンB1、脂肪の代謝に関係するビタミンB2、
タンパク質の代謝に関係するビタミンB6、コラーゲンの代謝に関係するビタミンC、
カルシウムの代謝に関係するビタミンD、眼の視力維持や白内障の予防に関係するビタミンAなど
すべてのビタミンの抗酸化力を再生し高める作用があります。

また、αリポ酸は自ら抗酸化物質として働くだけでなく、
抗酸化物質として働いて抗酸化力を失ったビタミンA,C,Eやグルタチオンなどの他の抗酸化物質を再生し、もう一度抗酸化力のある抗酸化剤に蘇らせる作用があります。

αリポ酸は、私たちが生きるために必要なエネルギー源となるATP(アデノシン三リン酸)を作るのに必要不可欠な働きをしています。

ATPは細胞中のミトコンドリアで作られていますが、
不規則な食生活やストレスで発生したフリーラジカルによって、ミトコンドリアがダメージを受けると、ATPも作れなくなるのでエネルギー産生が落ちてしまいます。
αリポ酸を補うことで、ATPが増産され、エネルギー産生がアップします。

αリポ酸は水溶性・脂溶性どちらにも働くことができるため、
血液や脳脊髄液そして脳、心臓、膵臓、腎臓、肝臓、骨、関節、体脂肪など、
あらゆる臓器のあらゆる細胞で抗酸化物質として働きます。

αリポ酸点滴の抗がん作用とは

αリポ酸点滴によるがん細胞への間接的な働きのひとつとして、
がんは、フリーラジカル(活性酸素の他、ストレスや放射線、タバコ、排気ガス、化学薬品、食品添加物など)の細胞膜へのダメージが原因となって起きてきます。
αリポ酸は水溶性にも脂溶性にも働く強力な抗酸化物質であり、これらのフリーラジカルをあらゆる臓器の細胞レベルで消去します。

がんの発生にはフリーラジカルが引き金となって、細胞をがん化させる転写因子(NFκB)がありますが、 αリポ酸はこの転写因子の活性を阻害して、がんの発現を阻止し、がん細胞の増殖を抑え、抗がん剤を効きやすくする効果もあります。
さらに、細胞周期において、がんの増殖を促進するタンパク質の活性やその量を低下させます。

またαリポ酸はフリーラジカルだけでなく、ほかの危険な毒物を無害化します。
さらに、がん細胞への直接的な働きのひとつとして、αリポ酸は、リンパ球のひとつであるT細胞の活性を高めることでがん細胞を死滅させます。
正常の細胞は、ミトコンドリア内で酸素を使ってブドウ糖からエネルギーを産生(好気性解糖)していますが、がん細胞では、酸素を使わずにブドウ糖からエネルギーを産生(嫌気性解糖)しています。
しかし、αリポ酸の投与により、酸素を使った好気性解糖が活性化されると、その代謝環境に応じられない結果、がん細胞はアポトーシス(細胞死)を起こします。

また、がん細胞のアポトーシスを阻害する因子(bcl-2)を抑える一方、アポトーシスを促進させる因子(bax)を活性化し、アポトーシスを実行するチトクロームCやAIF(アポトーシス誘導因子)のミトコンドリアから核への移行を促進させるなどの働きにより、がん細胞のアポトーシスを起こりやすくするといわれています。

αリポ酸点滴療法の実際

αリポ酸を初回300mgより点滴にて開始し、その後に量を増やしていき、通常600mg(患者さんの体重や状態により判断)として、以後この量を継続して点滴をしていきます。

点滴時間は1回30分 週2回を基本としています。
高濃度ビタミンC点滴療法の同時使用も可能です。高濃度ビタミンC点滴療法後に引き続きαリポ酸点滴をすることでビタミンCの抗腫瘍効果を増強します。

がん治療におけるαリポ酸点滴療法の特徴

ほぼすべてのがんの原発・再発・転移の治療やがん予防に適応があると考えています。

現在のがんの3大療法である手術、抗がん剤、放射線治療との併用も可能です。
胸水や腹水、透析中であっても治療可能です。
高濃度ビタミンCを継続していると胸水、腹水の増加をまねくことがあり、そのようなときは良い選択だとおもいます。
高濃度ビタミンC点滴療法との併用により抗がん作用の増強が期待できます。
免疫力の増強とがん細胞の自滅を促す低用量ナルトレキソン療法との併用による相乗効果が期待できるようです。

αリポ酸点滴療法の副作用

αリポ酸点滴療法の副作用として、
穿刺部位の痛みや灼熱感、また稀に低血糖症状(冷汗、寒さ、震え、動悸など)の出現がみられることがあります。
特に低血糖症に関しては、αリポ酸による『インスリン自己免疫症候群』のことで、ヒト白血球抗原DR4(DRB1*0406)を有する人がリポ酸やグルタチオンなどのチオール基(SH基)をもつ薬剤を服用した時に発症しやすいとされています。

αリポ酸点滴の対象疾患

乳がん・肺がん・膵がん・肝がん・食道がん・胃がん・大腸がん・直腸がん・腎がん・膀胱がん・前立腺がん・子宮がん・卵巣がん・悪性リンパ腫など、
ほぼすべてのがんの原発巣や再発・転移の治療に有効と考えます。
さらに抗がん剤の作用促進や副作用軽減、放射線治療の副作用の軽減に有効です。

がん以外の疾患ではC型肝炎と肝硬変への治療、悪化の予防に効果があるとされております。

ほかに糖尿病・高脂血症・動脈硬化などの生活習慣病、リウマチ・全身性エリテマトーデス(SLE)・皮膚筋炎などの自己免疫疾患、パーキンソン病などの神経疾患、エイジングケアや痩身効果に有効といわれています。

αリポ酸点滴の治療費用

初回300mgを点滴します。この場合の費用は5,500円です(診察費別途)。再診時に様子をうかがいます。問題がなければ600mg(9,900円)に増量します。以後は600mgで継続します。

点滴治療の頻度

週1回の点滴を3ヶ月行い、治療法の評価を行います。治療効果が認められ、点滴継続を行なった方が良いと判断されれば、患者様の同意をもって週1回の点滴治療を継続します。