2022.12.13

当院のコロナ後遺症治療について(原則保険適応外の診療となります)

コロナ軽症でも、高頻度に罹患後症状を発症します

コロナ感染症のあとの後遺症で来院する方が非常に多くなりました。

軽症だったかたにも何らかの後遺症がでることが、いままでの普通の風邪とちがうところだと思います。

最近の報告ですが、2022年10月に発表されたドイツ・ウルム大学の研究では、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)による感染症の急性期後6~12ヵ月の時期における、患者の自己申告による罹患後症状(いわゆる後遺症、とくに疲労や神経認知障害)は、たとえ急性期の症状が軽症だった若年・中年の成人であっても後遺症があり、健康状態や労働の作業能力への影響が大きいことが報告されています。

また、ドイツ南西部住民270万人ベースの研究では、SARS-CoV-2による感染症の急性期には、77.5%は医療を必要とせず、19.0%が外来治療を受け、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による入院を要したのは3.6%であったようです。

胸部症状、嗅覚/味覚障害、不安/抑うつも20%以上で出現していました。

急性期後6~12ヵ月の時期に発現した症状では、疲労(急激な身体的消耗、慢性疲労など、37.2%)と、神経認知障害(集中困難、記憶障害など、31.3%)の頻度が高く、いずれも労働能力の低下をまねいていました。 

また、胸部症状(呼吸困難、胸痛など、30.2%)、不安/抑うつ(睡眠障害、抑うつ気分、不安など、21.1%)、頭痛/めまい(19.9%)も高頻度にみられています。

嗅覚/味覚障害(嗅覚の変化、味覚の変化)は23.6%)、筋骨格系の疼痛(筋肉痛、関節痛、四肢痛)は16.8%、上気道症状(咳嗽、咽頭痛、嗄声)は13.9%で発現していました。

原著論文はこちら

Peter RS, et al. BMJ. 2022;379:e071050

後遺症の症状

後遺症としての症状は全身倦怠感、ブレインフォグ(思考力や集中力、記憶力の低下)、動悸・息切れなど多岐にわたります。意を決して病院を受診しても、血液検査では異常がないため「治療法はない」という理由で、医療機関を転々とする事例が多くなっているのが現状だと思います。

症状は、早く軽快するときもありますが、半年、1年継続する方もいます。

後遺症の病態(原因)

コロナ感染症の後遺症や新型コロナワクチン接種後の様々な体調不良に関しては、以下のような病態が指摘されています。

・免疫の異常と炎症

・神経機能の異常

・血管内の微小血栓

・栄養と代謝の異常

・自然免疫力の低下 などです。

免疫異常を背景とした神経接合部の炎症と神経伝達物質の欠乏が要因となり、各種の神経機能異常が引き起こされます。

2002年から流行したSARSではME/CSF(筋痛性脳脊髄炎・慢性疲労症候群)の病態が注目を集め、その後研究が進められてきました。これは免疫異常を背景に神経組織の炎症が発生し、様々な神経機能異常を引き起こす病態といえます。

そして、新型コロナ感染症においても「ブレインフォグや歩行障害、めまい、動悸などの自律神経障害は、МE/CSFが関与しているのではないか」と多くの専門家が指摘しています。このМE/CSFをいかに制御するかが、後遺症を克服するための大きなカギといえます。

МE/CSFでは、主として「神経接合部」が障害されやすいことが指摘されています。運動神経や自律神経などの神経伝達物質受容体に炎症が発生し、セロトニンやアドレナリンなどの神経伝達物質の欠乏を招き、様々な神経機能の異常をきたすのです。

後遺症に対する当院の対策(治療)

免疫および炎症を制御し、神経伝達物質の原料ならびに補酵素となるアミノ酸やビタミン・ミネラルの補給が重要な治療となります。

神経以外にも心筋や肺、消化管など全身各組織で炎症が発生しますが、この場合もやはり免疫の制御と抗酸化アプローチが求められます。さらに血管内微小血栓が形成される病態に対しては、EPA(エイコサペンタエン酸)の補給などの抗血栓アプローチが重要です。

ただし、実際に治療を行っているクリニックは非常に少なく、また、広く知られておりません。そのため、一般の病院で治療を受けられなかった方が、一部の診療可能なクリニックに集中しているのが現状です。その病態を改善させるために、一つには免疫異常と炎症を制御する治療が求められます。一方、この病態では活性酸素の増加による酸化ストレスが亢進するため、体内の「抗酸化力」を向上させる治療法が不可欠となります。

免疫を正常化して炎症を抑える治療と、抗酸化力を向上させる治療とは、実は共通点が多くあります。例えば、ビタミンCやビタミンDなどの各種ビタミン、亜鉛などのミネラル、グルタチオンなどの抗酸化成分の投与は、この2つの病態に対して改善を期待できる治療法です。

さらに神経機能回復のためには、神経伝達物質の原料となるタンパク質や各種アミノ酸、補酵素となるビタミンB群や鉄をはじめとする各種ビタミン・ミネラルなどを十分に補充する必要があります。これらはオーソモレキュラー栄養療法の手法です。

なお、免疫異常および炎症は神経組織の他にも心筋や肺、内分泌組織、消化管、生殖器など全身各所で発生し得ます。こうした病態に対しては、上記のような抗炎症・抗酸化に適した栄養成分を補充することが非常に重要な治療となります。

当クリニックでは、自費診療になりますが、栄養療法と共に、オゾン療法、高濃度ビタミンC点滴、グルタチオン点滴、キレーション点滴、プラセンタ療法などをおこなっております。

新型コロナウイルス感染症の後遺症に対して、オゾン療法に効果があることはあることは海外からも報告されております。

以下が論文による報告があります。

オゾン療法の論文

Fatigue in post-acute sequelae of SARS-CoV2(PASC) treated with oxygen-ozone autohemotherapy – preliminary results on 100 patients

European Review for Medical and Pharmacological Sciences 2021; 25: 5871-5875

  1. TIRELLI, et al:

Tirelli Medical Group, Pordenone, Italy

2021年イタリア ポルデノーネ市のパピア大学からの報告です

 CoV2感染急性期後遺症における全身倦怠感は海外ではPASC(Fatigue in post-acute sequelae of SARS-CoV2)とよんでいるようですが、コロナに感染した後に疲労感がつよい100人を対象に、クリニックでもしているオゾン療法(大量自家血液オゾン療法)が疲労に効果があるか検討しています。

7スコア疲労度スケール(FSS)という指標をもちいて疲労度を細かく分析しています。オゾン療法を、週1回を3回から4回をくりかえすことで、疲労感、痛み、不快感は少なくとも

全体の67%で改善していたということです。40%は完全によくなったようです。

オゾン療法が疲労に対する効果がある理由は、コロナ感染症は、全身の血管の内皮細胞の障害があるといわれており、血栓もそのために発生するといわれています。この疲労と血管内皮細胞の障害が関係しているようで、オゾン療法はもともとの効能として、血管内皮細胞機能の改善、機能向上があるので、疲労にも効果があるのではと報告しています。